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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)2326号 決定 1951年5月31日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人松本六三郎、同安藤仲吉、同山崎正一の弁護人桑島盛位の上告趣意について。

所論は、結局第一審判決の科刑重きに失するというに帰するから、明らかに刑訴第四〇五条に当らないし、また、記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとも認められない。

被告人山崎正一の弁護人岡田喜義、同鍛冶良道の上告趣意について。

所論は、控訴審で主張しなかった第一審の訴訟手続の違法を新らたに上告審で主張するものである。そして控訴審では控訴趣意書に包含されない事項を当然職権調査しなければならない義務を負担するものではなく、従って、かかる事項を職権調査しなかったからといって違法であるといえないばかりでなく、所論のごとく控訴棄却の判決には控訴趣意書に包含されている事項を排斥した外に明らかに刑訴三七七条乃至三八三条に該当すると思われる事由もないという判断をも示しているものということもできない。されば、所論は、第二審判決に対する適法な上告理由を定めた刑訴四〇五条各号のいずれにも明白に該当しない。また、所論の始末書は、第一審において刑訴三二六条の同意があり且つ被告人の供述書よりも前に犯罪事実に関する他の共同被告人の供述書が取り調べられていること記録上明らかであるから、第一審の訴訟手続には所論の違法もなく、従って、同四一一条を適用すべきものとも認められない。

よって、同四一四条、三八六条一項三号に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

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